« クライアント体験:読書療法感想『女性のための禁煙セラピー』 | トップページ | クライアント体験:読書療法感想『禁煙の愉しみ』その1 »

2006年6月 7日 (水)

お薦めの本:『医療現場におけるパーソナリティ障害』(医学書院)

  今回のお薦めの本は,林直樹先生らの新著

医療現場におけるパーソナリティ障害 ― 患者と医療スタッフのよりよい関係をめざして』(2006年,医学書院)です。

  現場におけるリアルな事例が満載で,わが身をそれこそリアルに振り返りながら一気に読めました。そしてあらためて確認できたのは非常にシンプルなことで,「クライアントさん・患者さんを大事にしたいのであれば,現場のスタッフを大事にせよ」ということであり,逆に言えば「現場のスタッフを大事にしたいのであれば,クライアントさん・患者さんを大事にせよ」ということであります。

  しかしこのようなことは,口で言うのはいとも簡単ですが,実際には様々な難問がつきまとってくるわけで,そのギリギリのラインを,林先生のさまざまな文章から学ばせてもらっているような気がします。もっと正確に言えば,「ギリギリのライン」が何なのか,それがよくわからなくなってしまうことが現場では多々ありまして,その際の判断の助けになるような考え方ややり方を,林先生の著作からはいつも教えていただいているような気がします。

  そういう意味で,本書で特に私が助けられたのは,クライアントさん・患者さんから告げられた違法行為(その計画を含む)にかんする対処法についてです。といっても,本書に具体的な指針が事細かに記載されているわけではありません。臨床家自身が自分で判断するための準拠枠のようなものが,漠と説明されているだけにすぎません。しかしそのような準拠枠こそ,まさしく私が求めていたものであり,またこのような準拠枠についてこそ,本書に限らず,林先生の立ち位置にはブレがなく,書かれていることに全面的に同意するかどうかはともかく,読む者が自分の体験を振り返りながら,しっかりと具体的に検討できるように思われるのです。

  クライアントを守り,現場で一緒に仕事をするチームスタッフを守り,自分自身を守り,その中でクライアントの回復を,それを信じながら粘り強く探っていく,という林先生の姿勢は,あちこちで散見する先生の文章から一貫して読み取れ,そして非常に勉強になります。

  ちなみに,本書以外でお薦めの,林先生のご著書といえば,

『人格障害の臨床評価と治療』(金剛出版,2002年)です。これは本当にお薦めです。認知行動療法について詳述はされていませんが,私は本書を読んで,なぜCBTがパーソナリティ障害の治療において,他のアプローチに比べると格段に行動化を惹起せずにすむのか,なぜCBTが安全なおとしどころを見つけられるのか,なぜクライアントさんが混乱せずにケースを全うできるのか・・・といったことについて,かなり整理できたように思われます。

  以上まとまりがなくなってきたので,ここらで終わりにします。

|

« クライアント体験:読書療法感想『女性のための禁煙セラピー』 | トップページ | クライアント体験:読書療法感想『禁煙の愉しみ』その1 »

コメント

はじめまして。
林先生って臨床心理方面にも影響をあたえていたんですね。
知らなかった…。

投稿: air_h_128k_il | 2006年6月23日 (金) 16時46分

こちらこそはじめまして。
少なくとも私の周囲の臨床心理関係者は
林先生を大変尊敬していますし,
著作から多くを学ばせてもらっています。
ちなみに「臨床心理方面にも」とお書きですが,
これは「精神医療方面に影響をあたえているのは
もちろん」という意味に受け取ってよろしいのでしょうか?
ともあれ,今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: coping | 2006年6月28日 (水) 08時57分


>ちなみに「臨床心理方面にも」とお書きですが,
>これは「精神医療方面に影響をあたえているのは
>もちろん」という意味に受け取ってよろしいのでしょうか?

よいです。
林先生の影響の濃い病院だからかもしれませんが、私の周囲
でも影響力強いですよ。
新作はチェックしてませんが、『人格障害の臨床評価と治療』は私も持ってます。ただ、治療のところはあまり具体的でな
く、こればっかりは現場で先生の治療を後ろからみて身につ
けるしかないかなあと思ってます。


投稿: air_h_128k_il | 2006年6月29日 (木) 02時52分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: お薦めの本:『医療現場におけるパーソナリティ障害』(医学書院):

« クライアント体験:読書療法感想『女性のための禁煙セラピー』 | トップページ | クライアント体験:読書療法感想『禁煙の愉しみ』その1 »