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2006年6月 5日 (月)

クライアント体験:読書療法感想『女性のための禁煙セラピー』

  禁煙(節煙)に対する読書療法のご報告第2弾です。

  あの『禁煙セラピー』の著者,アレン・カー氏による『女性のための禁煙セラピー』(2003年,KKロングセラーズ)についてです。

  実は数年前に『禁煙セラピー』は読んだことがあったのです。が,特に何の感想も持たず,そのまま忘れていたのでした。今回あえて購入したのは,「女性のための・・・」という書名に惹かれたのと(美容関係の記述満載かも・・・という淡い期待),『禁煙セラピー』を読んで禁煙した,という人が身近に何人かいたので,読書療法の一環としてまじめに読んでみようと思ったからでした。

  が,結論から言うと,感想は「なんてムカつく本なんだ!」という一言です。今回は禁煙(節煙)を目指すCBTのクライアントとしての立場で,ひねくれた視点ではなく,真面目に読もうと決意していました。本書の冒頭でも,“本書を読むときのルール”として,「心を開いて読む」と書かれてありまして,ふだんなら,このフレーズだけで,「ふん! 心を開いて読めそうな本だったら,わざわざこんなルールを掲げられなくても,自ら心を開いて読むに決まっているじゃない!」と即座にひねくれてしまいそうなところを,「よし,当事者として,ここはあえて心を開いて読んでみよう」と自分に言い聞かせて読み始めたのです。

  この本の特徴は,とにかく読者に,「あなたは単に,自分がニコチンに取り込まれているという錯覚に陥っているだけだ。意志の強弱の問題じゃない。あなたが止めようと思ったその日からタバコをやめれば,それで大丈夫」という“親切で優しい”メッセージに満ち満ちていることです。

  ご丁寧にも,こんなことまで書かれてあるんです。

タバコを吸い続ける人のほとんどが意志の強い人です。タバコをやめられるかどうかではなく,それ以外の面で,スモーカーの精神力を測った場合,禁煙できない人は精神力の強い人がほとんどです。(p.150)

   なんだそりゃ。とにかく禁煙できない喫煙者に対して,否定的でないメッセージを送ろうとする意図が見え見えです。(ヘビースモーカーの言う,「これだけ体に悪いもんを長年吸い続けている自分は,実は意志が強いのだ」という冗談のほうが,よほどマシだと思います。)

  上記のフレーズも含め,読みながら,とにかくムカムカしてくるんです。そしてその“ムカムカ”の正体は,以下のフレーズを読んだときにはっきりとわかりました。

禁煙したあともほかのスモーカーを避けてはいけません。
反対に周りのスモーカーを反面教師にするのです。残りの人生,同じことをしないですむと喜びましょう。スモーカーは惨めな麻薬中毒者です。その本当の姿が見えれば,あなたが感じるのは哀れみだけです。(p.183)

  要はいたるところで二重のメッセージを読者に送っているわけですね。読者に対しては,“禁煙を検討中のあなたは,ちっとも悪くない。意志だって弱くない。大丈夫。ただタバコをやめればいいだけの話。それだってちっとも難しい話じゃない”というメッセージを送りながら,同時に,こういう間接的な表現で,“喫煙者であるあなたは,実は惨めな麻薬中毒者なんだよ。人から哀れまれるかわいそうな存在なんだよ”と伝え続けているのです。戦略なんだろうし,こういう戦略で本書は売れまくっているわけだし,事実,本書によって禁煙できたという人が存在するので,こういう戦略もありだと認めないといけないとは思いますが,こういうダブルスタンダード的表現ってフェアじゃないと思うなあ。少なくとも私自身は,「喫煙者であるお前は惨めな麻薬中毒者だ。それがお前の本当の姿だ。私(著者)はお前に対して哀れみだけを感じるよ」とストレートに書いてもらったほうが,さぞかしスッキリします。

  というわけで,後味の悪い本でした。が,読書療法的には,こういう本を読んだことは決してマイナスではなく,自分の喫煙スキーマ,節煙スキーマ,禁煙スキーマを再確認でき,それはそれで有益だったと思います。また,セラピストとして,こういうダブルスタンダード的メッセージを発することのないよう真に気をつけよう,と襟を正すことができたというのも収穫だったのではないかと思います。

 

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コメント

どうでも良いコメントですが、鼻の角質をとる鼻パックという商品がありまして、それには男性用と女性用があるのですが、製品や成分は同じものなのに、説明書に書いてある内容が違っています。
男性と女性では物事の受け取りが違うということかなあと思いました。

投稿: nishikawa | 2006年6月 7日 (水) 21時43分

nishikawa様

コメントありがとうございます。

> 男性と女性では物事の受け取りが違うということかなあと思いました。

『禁煙セラピー』については,女性用をわざわざ読んだ意味が全くありませんでした。が,ついついそれを買ってしまった私でございます。

「物事の受け取り方」が男女で違うかどうかはわかりませんが,女性(少なくとも私)は「女性用」「女性のための」と冠がつけられていると,そちらに惹かれてしまうようです。そういう意味では,「男性と女性では物事の受け取り方が違う」というマーケティング的戦略は成功しているということになりましょうか。だからこそ「鼻パック」のメーカーも,男性用と女性用の両方を商品化したのでしょうね。

投稿: coping | 2006年6月 7日 (水) 23時46分

結局禁煙できてない人がこんなこと書いても
説得力ゼロですよね。

禁煙できない言い訳を
他者に責任転嫁しているだけのような。

挙句その結果が「節煙」ですか?

むしろどんな本か読んでみたくなりました。

投稿: killer | 2008年6月30日 (月) 17時51分

禁煙したい目的があるのに、書いてあることにわざわざいちいち反論するのは、自己肯定>禁煙なんですね、きっと

私は自分のそういう所の感情も視野に入れてキッチリ辞めれましたよ

自分の頭で色々考えるのは良いコトですが、ここでは禁煙成功が一番の目的なんですから、使い分ければ良いじゃないですか

きっとただまだタバコが好きで吸いたいだけなんでしょうね

投稿: | 2013年7月27日 (土) 14時45分

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