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2005年8月16日 (火)

【一人でできる認知療法・認知行動療法】その9:リラクセーション法 技法④

  ※久々の投稿です。理由はわからないのですが,原稿作成時には特に問題ないのですが,ブログ表示時にフォントがおかしくなってしまうようで,修復の仕方がわかりません。突然字が小さくなって表示されてしまいますが,特に意味はありませんのでご容赦ください。すみませんです。

●【リラクセーション法】

  CBTではリラクセーション法が多用されます。なぜなら役に立つし,安全だからです。実際のCBTのセッションでは,ストレス反応=症状は心身の過剰な緊張の持続によるものだということを,心理学的そして生理学的な説明(心理教育)によって理解してもらったうえで,リラクセーション法の練習に入りますが,ここではとりあえず,最も安全でコストのかからない【リラクセーションのための呼吸コントロール法】について,簡単に紹介します

 リラクセーションには,自分で実施するものと,他人や状況に依存するものの両方がありますが,そのどちらでも構いません。もしあなたが自分の自由になるお金と時間をたっぷり持っているのであれば,わざわざ自分でリラクセーション法を実施しなくても,たとえば温泉に行って,美しい風景を見ながら露天風呂でのんびりし,ついでにマッサージでもしてもらうことを毎日続ければ,まったりとリラックスしつづけられるかもしれません。が,私を含む多くの人は,そんな余裕はありませんよね。だとすると,時間とお金をかけずに,自分で自分をリラックスさせる方法を習得し,毎日実践するのが最も効果的でしょう。私自身,この仕事を選んで良かったなあと思う理由の一つは,数々のリラクセーションを習得し,日常的に実施することで(さらにラッキーなことに,クライアントさんとリラクセーション法を練習するチャンスが多々あることで),肩こりとか不眠とかいった慢性緊張症状から解放されたことです。

●呼吸コントロール法(腹式呼吸法)

 最初に最も重要なポイントを挙げておきます。「嫌な感じがしたら,とりあえず息を吐きましょう」ということです。心身が嫌な感じがするとき,私たちは,浅くて速い呼吸をしているか,息をぐっと詰めてしまっているかのどちらかです。そして嫌な感じがして「苦しいなあ」と思うと,なぜか「息を吸わなきゃ」と思って,さらに息を吸い込んで,自分を苦しくさせてしまうのです。そうやって吸えば吸うほど身体は過酸素状態になって,苦しさは増していきます。それがいわゆる「過呼吸」です。そういうときは,姿勢もおかしくなっています。肩で息を吸うものだから,肩や首や背中や後頭部の筋肉が異様に緊張・収縮して,上半身がガチガチになっているのです。そしてその分下半身は不安定になって,グラグラしています。パニック障害の方が,発作のときに「体がグラグラする」と言うのは錯覚ではなく,本当に下半身が不安定になって,グラグラしていることが多いのです。

 ではどうすればいいか。上記と反対のことをすればいいのです。つまり,下半身に重心を置き,息を吐いて吐いて吐きまくるのです。吐ききれば必要な分だけ自然と息を吸うように,私たちの身体は作られています。そうすれば過剰に吸いすぎることもなく,体がグラグラすることもなく,落ち着いてどっしりとした姿勢を保ち,静かに良い呼吸を繰り返すことができるのです。

  以上の手順をちょっとまとめてみます。

① 下半身(特に足の裏と下腹部)に意識を置いて,安定させる。(相対的に上半身の力が抜けます。)

② 一度,ふぅっと溜め息をつくようにして,口から息を吐きます。

③ 鼻から少しだけ息を吸います。・・・鼻水をすするように,啜り上げるのがコツです。このように息を吸うと,胃のあたりがふわっと膨らみます。

④ ③のようにして少しだけ吸った息を,口から細く長く少しずつ吐いていきます。最初は4秒ぐらいかけて吐ききれば上々です。慣れてきたら,8秒,16秒というふうに,吐く時間を長くしていきましょう。(慣れてくると少しだけ吸った息を,16秒ぐらいかけて楽に吐けるようになります。つまり少しだけ吸った息を,時間をかけてチビチビと大事に吐いていくのです。すごくケチな呼吸ですね)

⑤ 以上の呼吸を何度か繰り返します。結果的に心身の緊張が抜けてきますが,慣れるまでは,むしろどこかに痛みを感じたり,ちょっと苦しくなったりすることもあります。その場合は「嫌な感じがしたら,とりあえず息を吐く」という原則に立ち戻って,息を吐いてください。そして吐ききったらふだんの自然な呼吸に戻してください。そのうち嫌な感じは消えるはずです。

  呼吸コントロールは,最初は以上の手順に意識をしっかりと向けて,この手順を繰り替えすことだけに集中して行うといいでしょう。結果的にリラクセーション反応が得られればラッキーですし,特にリラクセ―ションを実感しなくても,やっていて具合が悪くならなければまずOKと受け止め,とりあえず上のような手順を繰り返しやってみるということを続けてください。そのうち「あれ,なんか力が抜けて,なんだか楽な感じがする」とか「ふうん。リラクセーションってこんな感じなんだ」と,何となく気づくときが来ると思います。そうしたらそのような感覚を大事に味わって,また日々続けていけば良いのです。重要なのは,リラクセーションが大事であることを知っておき,そのための手順を,リラクセーションが得られるかどうかは別として,日々ちょこちょこと実践することです。そのような日常的な実践が,結果的に深いリラクセーションをいつの日かあなたにもたらしてくだれるのです。

●今日のまとめの一言: 心身の過剰な緊張による諸症状は,リラクセーション法の実践により緩和することができる。代表的な方法としては呼吸コントロール法があるが,これははじめからリラクセーションを目的にするのではなく,とりあえず手順をしっかりと意識して,ちょこちょこと実施しつづけることがよい。リラクセーションは結果として得られる体験にすぎない。

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コメント

 全く呼吸はリラクセーションの王道ですね。誰でも必ずやっているのが呼吸なのだから、これを使わない手はありません。
 言語中心のセラピストは、呼吸や身体感覚を使うことを避ける傾向があるようですが(「身体に逃げる」とまで言う人もいたな)、copingさんはきちんと押さえていて、さすがと思いました。
 クライエントさんは、呼吸法の素人さんが多いでしょうから、こんな風にシンプルに、印象的に伝えたいですね。また、「使えるテクニック」を教えて下さい。

投稿: アド仙人 | 2005年8月24日 (水) 23時45分

アド仙人様

コメントありがとうございます。おっしゃる通り,呼吸だけは死ぬまでやっているので,有効活用したいものです。以前は自律訓練なども実施していましたが,呼吸さえちゃんと整えば,わざわざ自律訓練などしなくともうまくいく事例が多々あることがわかってきました。
それにしても「身体に逃げる」とは,なんて身体に失礼な!(と思いません?) CBTでは認知や行動と同時に,環境や身体や気分・感情も重視しますが,たまにCBTをレクチャーする機会があって,他の流派の人にそのような話をすると,やはり身体症状や身体的現象を軽視しているかのような発言を聴くことがあります。心は上等で,身体はそうではない,といった考えがあるようです。どうしてそういう論理になるのか不思議ですが,そういう私も生理学や身体論にさほど詳しいわけではないので,アド仙人さんのブログなども参考にしながら,もっと学んでいきたいと考えております。
よろしくお願いいたします。

投稿: coping | 2005年8月26日 (金) 23時08分

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