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2005年8月 5日 (金)

【一人でできる認知療法・認知行動療法】その8:イメージ技法 技法③

 最近諸事情により脱線気味の当ブログでしたが,本線に戻そうと思います。一人で認知行動療法(CBT)にトライする人に少しでもヒントになれば,という【一人でできるCBT】シリーズに話を戻します。といっても,かなり不十分な記述が続くことと思います。いずれもうちょっと系統立てて,ストレスコーピングの視点から,【ひとりCBT】については書きたいと考えておりますので,どうぞお許しを。何かあればコメントください。

●【イメージ技法】

  認知というと,“言語的な思考”ばかりが注目されがちですが,もう一つの認知である“イメージ”のことを忘れてはなりません。上記の認知再構成法や問題解決法の中にイメージを組み込むということもできますが,これらの技法はどうしても言葉を使って進めていくので,なかなか難しかったりもします。

  イメージの力は強力です。たとえば夢はイメージ的側面が大きいですよね。明け方見た夢によって,寝起きの気分が大きく左右されたりするのは,よくあることです。いわゆるフラッシュバックという現象も,イメージのもつ影響力の大きさを物語っています。逆にスポーツ選手が行う“イメージトレーニング”は,イメージのそのような影響力を意図的にプラス方向に活用しようというものです。

  ここでは私が実際に臨床場面でよく用いる,イメージ技法を二つ紹介してみます。

●イメージリハーサル:「こういうときは,こうしよう」「明日,これをやるときには,こんなふうにできたらいいな」という未来の自分の言動を,できるだけ具体的なイメージとしてリハーサルするというものです。何事も本番の前に,現場で実際の言動としてリハーサルできれば一番良いのですが,そうはいかないことも多々ありますよね。そういうときは,できるだけリアルなイメージをありありと思い描き,イメージの世界でリアルにリハーサルすれば良いのです。夢があれだけリアルなのですから,自分で作るイメージも練習すればするほどリアルに思い浮かべられるようになります。ポイントは,「現実的にできそうなレベルのことをリハーサルする」ということです。

  たとえば翌日,結婚式に呼ばれていてスピーチしなければならない,というときに,私はこのイメージリハーサルを行います。そのときイメージするのは,人々の前で全く緊張せず,よどみなく話している自分ではなく,緊張してマイクを持つ手も少し震えているのですが,なんとか最後まで話をするという自分です。できないことをイメージしても,やっぱりそれはできないので,「とりあえずこの程度できればいいや」というレベルでのリハーサルに留めておくのです。それでも一度リハーサルしておくと,脳はそれを「一度体験したこと」として記憶に留めてくれるので,本番がかなり楽になります。

  明日,苦手な人と話さなければならない,などというときにも,このイメージリハーサルは有効です。どんなふうに挨拶をして,嫌なことを言われたらどう切り替えして・・・といったことを予め決めておいて,リハーサルしておくのです。すると,実際に嫌なことを言われても,リハーサルしたとおりに対応すればよいので,その場でオタオタしなくて済みます。(こういうときって,オタオタしてしまった自分を,後になってクヨクヨと悔やむ羽目に陥りがちなのですが,リハーサルしておくとそれを防げます。)

●壺イメージ法:田嶌誠一先生という方が考案したイメージ法です。一時期私はこの技法の虜になり,壺イメージ法のワークショップやシンポジウムにしょっちゅう参加していました。壺イメージ法は,自分の好きな壺をイメージして,嫌なこと,考えたくないこと,今はそっとしておきたいことなどを,その壺にしまっていく,というイメージワークです。「捨てる」のではなく,「壺にしまっておく」というのがポイントです。詳しくは,田嶌先生の本などを参照していただきたいのですが,入手の難しい本が多いようです。お勧めは『イメージ体験の心理学』(講談社現代新書)なのですが,これも品切れで入手不可能とのことで,興味のある方は図書館などで探してみてください。

  この技法のポイントは,先に自分の壺を決めておくということです。なかなかイメージできなければ,絵に描いてみてもいいですし,実際にどこかで見た壺をイメージすることにしても構いません。自分の思いをそっとしまっておく壺という器を先に決めておいて,嫌なことを考えたり,思い出したりして,そのグルグル思考からなかなか脱け出せない場合,まず先に壺をイメージし,次にそれらの考えや思い出をそこにしまっていくのです。この壺イメージ法は,やってみると意外に簡単で面白いものです。クライアントさんにもよくこの技法は紹介しますが,(いい意味で)はまる人ははまり,「今度嫌なことを思い出したら,こんな壺にしようかな,それともあんな壺にしてみようかな」と,壺の考案そのものを楽しむ人もいらっしゃいます。すると面白いことに,嫌なことがあっても「今日はあの壺に入れちゃえ」と,嫌なことよりも壺に気が向くようになり,それだけでもストレス反応が緩和されることがあるのです。

●今日のまとめの一言: 「認知」とは言語的思考だけではない。もうひとつの認知である「イメージ」は,良い意味でも悪い意味でも強力な影響力をもち,CBTではイメージを活用する技法もよく使われる。

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コメント

「『とりあえずこの程度できればいいや』というレベルでのリハーサルに留めておく」のが大事なのには、ハッとしました。ついご気楽な僕は、安易に理想のイメージを浮かべるようにしていたかも、と気づきました。世間に流布する安易なポジティブ思考にはいらついていましたが、自分も気をつけなきゃ。
 壺イメージ療法は、アドラーの勉強会でもやったことがあって、面白いと思っていました。使ったことはなかったけど、今度やってみようと思います。

投稿: アド仙人 | 2005年8月 8日 (月) 00時51分

アド仙人様

 コメントありがとうございます。CBTでは「できそうなことだけ」を課題にして,「できてよかったね」と喜び合う,というのが特徴の一つだと思います。そういう意味では,すごーく地味。アドラーの勉強会で壺イメージ療法をやった,ということ自体が面白いですね。いろいろ安直にアド仙人様に質問したくなりますが,今週中にでも本が届く予定なので,そちらでちゃんと勉強することにします。
 

投稿: coping | 2005年8月 8日 (月) 08時03分

こんにちは。先日はcoping様の独り言に対して、失礼なことを申し上げてすみませんでした。もちろん、coping様の個人的ブログなので、どんな話題でも自由ですよね。ただ、他の心理関係の方のブログは、結構専門のことで白熱してくると、素人の私は読んでいるのも怖くなるくらいなのです。だから、安心して読めるcoping様のブログもそんな風になったら読めなくなってしまうなあ、とふと思ったものでつい書き込みしてしまいました。
さて、今回の内容についてです。
イメージに関しては私はよくしているつもりです。人と接することに常に不安と緊張ががあるので、来るべき場面を想定してどんなことを言うか、どういう調子で言うか、イメージします。リハーサルもします。だから、自分のやり方もあながち自己流でもなかったんだなあと思いました。やはり、準備をしておくといざそのときによどみなくできることが多いです。でも、人付き合いは、自分のシナリオどおりに運ぶことのほうが少ないですから、状況の改善は難しいですけれど。
また、私の場合は理想的なものをイメージします。何回も推敲して、よりよいものをイメージします。そこまでしても、現実にその場を迎えると、気が弱いので、「まあこのくらいでいいか」ぐらいのことに終わることが多いかもしれません。結果的には相手に対してはそれでよいかもしれませんが自分にとってはストレスになってしまっているかもしれないと思いました。

壷イメージの記事を読んで、私は同じ講談社現代新書の『迷う心の心理学』増井武士著
を思い出しました。
これには、確か「迷う心をそっと箱に入れておいて・・・」と言ったことが書いてあったと思います。それが気に入ったのです。なんだか森田療法とも通じるところがあるような気がして、言葉は違うけれど同じような(とは、私が勝手に解釈しているだけですが)ことを言う方はいるものだなと感じました。自分の好みは変わらないな、とも。図書館で借りて読んだので、詳細は忘れてしまい書けませんが、coping様はご存知ですか、この本を。
『イメージ体験の心理学』のほうが古いようですが、この二つの考えは、関連があるのでしょうか。ご存知でしたら教えていただければ幸いです。壷イメージも、読んでみたいと思います(いつになるかはわかりません、読書する気力が落ちているものですから、すみません。リストに加えておきました)。
それでは、これからも楽しみにしております。長々と申し訳ありませんでした。

投稿: akino | 2005年8月10日 (水) 22時01分

akino様
コメントありがとうございます。先日の「独り言」へのコメントもありがたく思っております。全然失礼だなんてことはありません。

>結構専門のことで白熱してくると、
>素人の私は読んでいるのも
>怖くなるくらいなのです。

こういうコメントこそ,私たち専門家は心して拝読しなければと思います。ありがとうございます。

イメージリハーサルや理想的なことをイメージすることについて,ご自身のお話を教えてくださり,こちらもありがとうございます。理想のイメージを何度も推敲するというのは,すごいですね。これまであまり考えたことがありませんでした。私自身,トライしてみたいと思います。

増井氏の著書は知りませんでした。「迷う心をそっと箱に入れておいて」というのは,確かに壺イメージ療法とかなり共通しているように思いますが,イメージ療法については私自身,あまり詳しくないので,これ以上解説ができません。すみません。「そっと箱に入れる」というのは,「こだわらず,あるがままに」ということだと思いますので,おっしゃる通り,森田療法にも通じるような気がします。

示唆に富むコメント,本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

投稿: coping | 2005年8月11日 (木) 00時17分

早速のお返事どうも有り難うございました。
著書名に間違いがあったので訂正します。
『迷う心の整理学』でした。失礼いたしました。

投稿: akino | 2005年8月11日 (木) 09時36分

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