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2005年5月21日 (土)

【認知療法・認知行動療法】コラムその3:専門機関・専門家の探し方

●もし私が当事者だったら,どうやって探すか

  認知療法・認知行動療法を専門家の指導のもとでやってみたいという方が,どのように専門機関や専門家を探せば良いかということについて書いてみます。アドバイスというよりは,たとえば「もし私がうつ病にかかったら,自分だったらこうする」という視点から,シュミレーションしてみたいと思います。 ※これから書くことは,あくまでも筆者の私見です。筆者とは異なる考え方ももちろんあるでしょうから,一つの考え方として参考にしていただければ幸いです。

①病院の専門外来を受診する

  もし私がここ数週間,あるいはここ数ヵ月間,ひどく落ち込み続けていたり,パニック発作を頻発して社会生活を送るのが困難になっていたり・・・というふうに,何らかの精神的な症状で困っていてCBTを受けたいと思ったら,“認知療法外来”または“認知行動療法外来”でネット検索して,そのような専門外来のある医療機関を受診するでしょう。病院が専門外来を設置しているということは,きちんとトレーニングを受けた専門の医師がいると考えられますから,最初の受診先としてはまず安心です。保険証も使えます。そのうえで,念のため事前に調べるとしたら,こんなことです。

たとえばA大学病院に認知療法外来があることを知ったとします。そうしたらA大学病院とかその外来の担当医師名を再度ネットで検索し,たとえば日本認知療法学会といった学会で発表や講演をしたりしているか,CBTに関する論文を書いているか,といったことを確認します。「学会発表や論文があれば確実」というわけではありませんが,そのドクターらが,少なくとも学問的にきちんとCBTを習得し,臨床実践しているという根拠にはなりますから。

②クリニックを受診する

  もし私が,仕事を続けながらCBTを受けたいと思ったら,病院の専門外来は物理的に受診が難しいかもしれません。その場合,「認知療法ができます」とホームページなどで謳っている精神科や心療内科のクリニックを受診することを検討します。その際,事前に確認したいことがいくつかあります。

  一つは,誰がCBTを実施するのか,ということです。つまりそのクリニックの医師なのか,そのクリニックに勤務するカウンセラーなのか,そのカウンセラーは臨床心理士なのか,それとも何か別の資格を持っているのか,などです。ホームページを見てもわからなければ,メールを送るか電話をするかなどして,直接確認して情報を仕入れます。

  誰がCBTを実施するのか,ということが分かれば,やはりネットで検索するなどして,その人が学会で発表や講演をしたりしているか,CBTに関する論文を書いているか,といったことを確認します。あるいはこの件についても,メールや電話などで直接問い合わせるかもしれません。問い合わせをするとしたら,CBT実施者の訓練歴や臨床歴について,また所属学会などについて,具体的に尋ねます。

もう一つ確認したいのは,そのクリニックでCBTを受ける場合,健康保険がきくのかきかないのか,ということです。クリニックの場合,きく場合と自由診療で高い面接料がかかる場合の両方がありえます。

以上の情報を仕入れた上で,そのクリニックでCBTを実施する専門家が医師または臨床心理士で,CBTについてある程度の実績があることが具体的に開示され,専門の学会にも所属しており,そのクリニックでのCBTに保険証が使えるということであれば,私は予約をして受診すると思います。

保険がきかないとか,そのクリニックが経営するカウンセリング機関であればCBTが受けられるということであれば,以下のやり方で検討を続けます。

③通院しながら,別の機関でCBTカウンセリングを受ける

  もし私がうつ病などですでに通院中で,その治療自体には特に不満はないし,主治医のことも信頼できるのだけれども,通院先ではCBTを受けられないという場合,通院しながら,別の機関でCBTをカウンセリングとして受けることを検討するでしょう。この場合,まず主治医に相談して専門機関を紹介してくれるよう依頼します。

  主治医が紹介先を持っていない場合は,やはりネットなどで検索して,「認知療法」「認知行動療法」を実施しているという相談機関を探します。あとは上と同様に,その機関やカウンセラーが,本当にCBTの専門家であるかを確認するために,ネットで調べ,さらに直接問い合わせをして,情報を収集します。そして次の観点から,収集した情報について判断します。

・そのカウンセリング機関に所属するカウンセラーは,臨床心理士の有資格者か。(臨床心理士だから良いというわけでは全くありませんが,一応の目安にはなると思います)

・カウンセラーは,CBTの継続的な訓練を受けているか。(単発のセミナーに出たことがあるという程度では,訓練を受けているとは言えません)

・カウンセラーは,専門の学会に所属し,大会に参加したり発表したりといった専門家としての活動を続けているか。(特に,「日本認知療法学会」または「日本行動療法学会」に所属しているかどうかを確認します)

・その他こちらの問い合わせに,具体的で納得のいく説明があるか。

  以上いろいろと調べてみて納得ができたら,主治医に紹介状を書いてもらい,初回面接(インテーク面接)の予約を入れます。初回面接で,自分がその機関でCBTを始めたらどのようなプロセスをたどるのか,その機関で実施しているCBTとはどのようなものか,納得のいくまで説明を求めます。その上で,以下の点について,「とりあえず大丈夫そうかな」と思えたら,カウンセリングを継続することにします。

CBTとは何か,ということについて具体的でわかりやすい説明があった。

・自分の主訴や症状をきちんと調べた上で,自分に合った技法を選ぶという流れで進んでいくらしい,ということがわかった。(逆に,「コラム法で考え方の癖を直すのが認知療法だ」という主旨であればパスします。

・こちらの質問に対して,具体的でわかりやすい説明があった。

・わからないことは,「わからない」とはっきり答えてくれた。

・今後どのような流れで進めていくのか,具体的な説明があった。

・そのカウンセラーと協同作業ができそうな気がした。すなわち一方的に話すとか,一方的に教えられるとか,そういう感じではなく,カウンセラーと一緒になってCBTを進めていけそうな感じがした。

④特に通院などはしていないが,CBTカウンセリングを受けてみたい

  もし私が,通院するほどの症状や問題があるわけではないけれども,自分がよりよい状態で生きていくためにCBTを受けてみたい,専門家のもとでCBTを習得したいのであれば,上記「③通院しながら,別の機関でCBTカウンセリングを受ける」と同様の視点から,民間のカウンセリング機関を探します。

  以上,専門機関と専門家の探し方と選び方でした。つまり保険証が使える病気や症状があれば病院の専門外来を受診しますが,その場合は,その専門外来をとりあえず信頼してみることして,事前にたくさんの情報を収集するようなことはしません。病院の専門外来という点で,ある程度信用が担保されるからです。あとは通ってみて,そこに通うことが自分のためになりそうかどうか,判断すれば良いのです。

しかし保険証が使えない,つまり1回の面接に数千円から1万数千円を支払わなくてはならない機関でCBTを受けるとしたら,その機関が医療機関の所属であろうがなかろうが,事前に相当な情報収集をし,さらに一度行ってみてよく話をして,上のような視点から,その機関でCBTを続けるかどうか検討すると思います。その上であとは通ってみて,やはりそこに通うことが自分のためになりそうかどうか,判断します。カウンセリング機関に対してこれだけ慎重なのは,やはりカウンセラー(臨床心理士)の質にあまりにもばらつきが大きいのと,それなりにコストがかかるからです。そして別記事でも述べましたが(【認知療法・認知行動療法】コラムその2:新世代の認知行動療法),考え方の癖を直すという古典的な認知療法を,「それが認知療法だ」と思い込んでいるカウンセラーの実施する“認知療法”では,効果が期待できない可能性が高いからです。逆に,上の条件を満たす機関でCBTを受けることに決めたら,たとえ保険がきかずかなりの出費を強いられるとしても,「一生使えるセルフヘルプのスキルを身につける良い機会だ」と考え,かけたお金のもとを取るつもりで,真剣に取り組むことにするでしょう。

●今日のまとめの一言: 認知療法・認知行動療法の機関や専門家を探すには,それなりに時間をかけて情報収集する必要がある。

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コメント

こんにちは。
どれも面白く読ませていただいております。
医者に行く前、もしくは認知療法を薦められてすぐにこのブログに出会えていたら・・・と思います。
この記事を読んですぐ、検索してみたのですが、都会の病院ばかり出てきました。
私は地方都市に住んでいます。行くのはとても無理です。やはり地域間で不公平がありますね、仕方ありませんが。
私の行った医者も、カウンセラーも認知療法と言う技法の名前は知っていたかもしれませんが、それほど詳しいとは思えませんでした。(素人の私がこんなことわからないけれど、勘です。)
だから、受けるのを断ってしまいました。
自分で本は何冊か読んで、なるほど、と興味はわいたのですが、自分で効果的に行うのは、かなり難しいのでしょうね。
私が読んだのは、すべて古典的なベックのものです。医療の現場はまさに日進月歩なのですね。
素人の感想でした。
これからも楽しみにしております。

投稿: すみれ | 2005年5月26日 (木) 22時25分

すみれ様
コメントありがとうございます。「地域間」の格差・・・耳が痛いですが本当のことです。この問題を何とかするために,専門家間では非常に真剣に議論されておりますが,その成果が現場に反映されるのはまだ先のことになってしまいそうです。
それにしても,何冊か認知療法の本を読まれて,すみれ様なりに活用なさっているのは,やはりすごいことだと思います。もしよければどの本が一番参考になったか,教えていただけますか?
このブログが少しでもお役に立てるよう続けていきたいと思います。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

投稿: coping | 2005年5月26日 (木) 23時17分

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