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2005年5月10日 (火)

認知療法,認知行動療法の特徴 その2

しばらくは,認知療法,認知行動療法(以下略してCBTと表記することも)の特徴というテーマで,あれこれと書いていきたいと思います。

●個人の自助力(セルフヘルプの力)を信頼すること: CBTの特徴 その2

 認知療法,認知行動療法(CBT)の特徴として,人が自分自身をよりよく助ける能力(“自助力”とか“セルフヘルプの力”と呼びます)を,徹底的に信じるということが挙げられます。

  人間の自助力に信頼をおくセラピーはCBTだけではありませんが(CBT以外にも,“ブリーフセラピー”など新世代のセラピーは,自助力を大いに信じるアプローチが多いです),なかでもCBTに特徴的なのは,「人は自分で自分をよりよく助けることができる」ということを,最初からクライアントさんにはっきりと伝えるということでしょう。

  セラピーを受けに来たクライアントさんの多くは,落ち込んでいたり,不安に巻き込まれていたりして参ってしまっています。(参っていない人が,わざわざセラピーを受けに来ることはほとんどありません。)私もそうですが,人は参っていると,「ああ,やっぱり自分はダメなんだ」とか,「生きていてもいいことなんかない」とか,「もうどうすればよいのか,私にはわからない」とか,とにかく非常に弱気になってしまうものです。そういうクライアントさんに対して,CBTのセラピストは,「誰にでも自助力というのがあります。あなたにももちろんあります。CBTは,あなたの自助力の回復や増進のお手伝いをするセラピーなんですよ」とはっきりと伝えるのです。それだけで少し救われたように思うクライアントさんも多いようです。

  ところで,クライアントさんに「あなたの自助力を伸ばしましょう」と伝えるには,セラピスト自身が人間のセルフヘルプの力を心から信頼していることが必要です。それにはある程度の臨床経験が必要だと私は考えます。セラピスト自身がそれまでの人生経験で“自助力に対する信頼”を培ってきた場合は,経験がなくても大丈夫なのかもしれませんが,少なくとも私はそうではありませんでした。臨床経験を重ね,多くのクライアントさんと関わらせていただいた結果,「人間はどんなに苦しんでいても,時がたち,あれこれ工夫をしていれば,とにかく何とかなるものなんだなあ」というふうに思えるようになったのです。「人には自助力があり,それを信じていい」ということを,私は多くのクライアントさんに教えていただいたのです。

(余談ですが,経験の少ないセラピストにスーパーバイザーが必要なのは,このことと関係があると私は考えています。スーパーバイザーの役目の1つは,新米セラピストがクライアントの自助力を信じられるよう,力づけてあげることだと思います。私自身,とくに初心者のうちは,今も敬愛する某師匠にどれだけ助けていただいたことか。師匠に「これこれこうだから,大丈夫だよ」と言われると,本当に安心するものです。)

  さて上に書いたように,人はそのときどんなにひどく参ってしまっていても,時がたち,いろんな工夫を続けていれば,そのうちに何とかなるものです。嬉しいことがいつまでも続かないのと同じように,苦しい状況や苦しい気持ちも,状況が変わったり,何らかの工夫が奏効したり,あるいは何か別の出来事が起きたりして,いつかは変わっていくものです。その際一番重要なファクターは,間違いなく“時間の経過”だと思います。セラピーなど受けなくても,時間が経過するうちに,どんなに苦しい状況でも何とかなっていくものです。しかし,その“時間の経過”を待つというのがあまりにもつらい,できるだけ早く今の状況から脱け出したい,という方には,認知療法,認知行動療法(CBT)のような問題解決型で人の自助力を信じるタイプのセラピーを,1つの方法としてお勧めします。

  苦しい状況や苦しい気持ちというのは,すなわちストレスをたくさん受けているということになります。CBTでは,自助(セルフヘルプ)のための考え方とスキルをクライアントさんに学んでもらうセラピーです。うつ病の方にCBTを実施すると再発率が低くなることが知られていますが,これはCBTを通じて,クライアントさんの自助力が回復・向上するからでしょう。CBTにおける考え方やスキルを身につけたからといって,生きていくうえでのストレスはなくなるわけではありませんが,CBTを受けたクライアントさんの多くが,終結時には,「自分でも何とかできそうだと思えてきた」「いろいろ大変だけど,できる範囲で対処すればいいんだということがわかった」とおっしゃいます。これらの言葉からも,クライアントさん自身が自助力を伸ばし,自分の力にふたたび信頼が置けるようになったのだということが,おわかりいただけるかと思います。

  最後に。CBTは本などを参考にして,一人でもできるセラピーです。セラピストなしでCBTを行う場合は,ぜひこの「自助力を信じる」ということを忘れずに,挑戦してみてください。その際,無理やり「大丈夫」と思い込む必要はありません。とりあえず,「誰にでも自分で自分を助ける力というのがあるらしい。だったら自分にもあるかもしれない。とりあえずそう考えてみることにしよう」というふうに思いながら,CBTの練習をしていただければと思います。

●今日のまとめの一言:認知療法,認知行動療法は人間の“自助力”を信頼し,それを積極的にクライアントに伝えていくセラピーである。

 

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コメント

 はじめまして、検索してたらここに来ました。同じく臨床心理士で児童相談所や精神科に勤務していたことがあります。
 認知行動療法はよい治療法と常々思っていました。専門的に学んだことはありませんが、私が主に関わっているアドラー心理学の仲間にも認知療法や論理療法をやっている人がいて、僕も本を参照しながら実践したことがあります。
 とても面白いと思いました。
 是非、ここで学ばせて下さい。
 また、私も恥ずかしながらブログ初心者なので、大いに励まされました。がんばってください。

投稿: アド仙人 | 2005年5月11日 (水) 00時08分

 私のブログにもコメントありがとうございます。友人、知人は見てくれてましたが、特に反応もなく、やはりコメントがつくとうれしいものです。
 認知に焦点を当てながら、身体のあり方にも気配りをしようとされておられるとのことで、自分と共通した方向性を感じました。
 私は相当妖しい心理士ですが・・・。
 よろしかったら、またトラックバックなどさせてください。

投稿: アド仙人 | 2005年5月11日 (水) 23時50分

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