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2005年5月16日 (月)

【認知療法・認知行動療法】コラム:「ツッコミ小人」(@中村うさぎ)を育てよう

●メタ認知能力抜群の中村うさぎさん

  気軽にこのブログを始めたはずなのに,ついつい端くれながらも研究者の癖で,気がついたら,認知療法・認知行動療法(CBT)について系統立てて説明しようとしていました。だんだん仕事のような気がしてきたので,ちょっと気分を変え,「コラム」ということで気軽に書き込んでみようと思います。

  私は週刊文春に連載されている,中村うさぎさんのエッセイ(タイトル:さすらいの女王)の愛読者です。何が面白いかというと,エッセイに描かれているうさぎさんのキャラクターや言動や考え方はもちろんですが,うさぎさんのエッセイって極めてCBT的なんです。うさぎさんが,ハチャメチャに買い物しても,美容整形しても,ホストに入れ込んでも,人として破綻しないのは,中村さんが,自分に対して自分でCBTをやっているからだと思います。

  もちろんCBTとして自覚なさっているわけではないでしょうが,刻一刻と変化する自分の状態や自分を取り巻く状況をアセスメントして,自己調整し,なんとかギリギリのところで自分と折り合いをつけているんですね。これを「1人認知療法」と言わずして何という?というぐらい,見事にCBTをなさっているんだと思います。(専門的に言えば,メタ認知能力が非常に高いということだと思う)

  とくに最近,うさぎさんは『文春』で,「ツッコミ小人」のことを何度か書かれています。「ツッコミ小人」とは,“自分を正しく裁くために脳内に育成した小人”だそうです。うさぎさんの「ツッコミ小人」は,物書き業として他者に対して意地悪な視点を持たざるを得ないので,それとバランスを保つために,同様に意地悪な視点から自分に突っ込む小人なんだそうです。

「ツッコミ小人」かあ。・・・これこそまさに認知療法・認知行動療法(CBT)が,重視していることなんです。CBTを通じてクライアントさんが,ほどよいツッコミ小人を自分の中に飼ってくれるようになれば良いのです。「クライアントさんにとって,ほどよいツッコミ小人とは,どんな小人か。どんなツッコミ小人とだったら,うまくやっていけそうか。そんなツッコミ小人を育てるにはどうしたらいいか」ということを,セラピストとクライアントさんが一緒になって,ああだこうだ言いながら探していくのが,CBTなのです。

  だから,CBTが探したり育成したりしたいのは,自分に対して厳しいだけのツッコミ小人ではなく,状況を落ち着いて見極め,時と場合によって,優しくしてくれたり,アドバイスしてくれたり,励ましてくれたり,なぐさめてくれたり,合理的な意見を言ってくれたりするような,そんな「ほどよくナイスなツッコミ小人」なのです。

ということをセラピーで実現するためには,もちろんCBTのセラピスト自身が,自分のなかに「ほどよくナイスなツッコミ小人」を飼っている必要があります。私自身,そんなツッコミ小人をちゃんと飼えているんだろうか? ときどき自己点検して,自分のなかのツッコミ小人とおしゃべりする必要がありそうです。ちゃんと

  それにしても,「作家」というのは,すごい職業だと思います。CBTが目指していることを,「ツッコミ小人」というたった一言で過不足なく示してくれるのですから。恐るべし,中村うさぎさん。これからも目が離せません。

●今日のまとめの一言:自分に合った,そして自分をほどよく助けてくれる「ツッコミ小人」を自分のなかに育てましょう!

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コメント

「つっこみ小人」、いいですね。ただの買い物好きで破綻瀬戸際のおばさんかと思っていた中村うさぎさんが、そんな素敵なことを考えていたなんて。やっぱり人は侮れないものです。
 おもしろいエピソードだし、僕にも使わせて下さい。
 うまくやれている人の、秘められたリソースを知るのは楽しいものですね。

投稿: アド仙人 | 2005年5月18日 (水) 23時45分

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