« 【認知療法・認知行動療法】コラムその4:自動思考についてのナイスな説明 | トップページ | 【ストレスコーピング】 コーピングレパートリーを豊かにしよう »

2005年5月26日 (木)

【一人でできる認知療法・認知行動療法】その1:どんな時に始めると良いか

●一人でもCBTを実施することは可能

  先日,認知療法・認知行動療法(以下CBTとも)の専門家の探し方について紹介しました。本格的にCBTを受けてみたい,試してみたいというのであれば,できればCBTのトレーニングをきちんと受けた専門家と一緒に行うのが理想的ですが,前述のとおり,日本では残念ながら専門家の絶対数が不足しており,それが難しいというのが現状です。

http://cbt.cocolog-nifty.com/coping/2005/05/post_dcfd.html

  ですが悲観的になる必要はありません。CBTは気をつけて行えば一人で実施することも可能です。料理と同じです。たとえば,美味しいコロッケを作りたい人が,料理教室に通ってコロッケの達人に作り方を教われば,最も効率的に美味しいコロッケの作り方を覚えられるでしょうが,料理本のレシピを見ながら,自分でコロッケの作り方を習得することも,やろうと思えば誰でもできますよね。この場合,先生に教わるのに比べて時間がかかるかもしれませんし,何度かは失敗してしまうかもしれません。けれどもあきらめずにトライしつづければ,いつか自分なりの美味しいコロッケの作り方を習得することが可能です。そして一度,自分なりのコロッケ調理法を身につけてしまえば,これから一生,美味しいコロッケを自分で作りつづけることができ,自分で食べたり,誰かに食べさせたりすることができるのです。

  CBTの自習もコロッケの例と全く同じだと考えてください。きちんとした専門家のもとでCBTを受けられれば理想的ですが,そうでない専門家(※専門家の見分け方については別ページを参照ください)とやるよりは,むしろ多少時間がかかるかもしれませんが,CBTを自習するほうがずっと良いのではないかと思います。

  ただし,CBTを一人でやるのであれば(以下,「ひとりCBT」と呼ぶことにします),効果的に自習できるように,ある程度のポイントを押さえておく方がよいでしょう。そこでこのブログでは,これから何回かに分けて,「ひとりCBT」をなさりたい方のために,いくつかアドバイスをしてみたいと思います。(ただしこれから書くことは,例によってあくまでも筆者の私見です。)

  今日はまず,どんなときに「ひとりCBT」を始めたらよいのかについて,書いてみます。

●回復期に“仕上げ”として実施する

  仮にあなたは今,うつ病などの精神疾患に罹患して,現在治療中であるとします。そして現在,治療を始めたばかりであるとか,合う薬物を探したり試している最中であるとか,抑うつ症状が重くて生きているのが精一杯であるとか,本を読んだり何かを書いたりする気には全くなれないとか・・・・・,といった状態であれば,今,「ひとりCBT」はトライしないほうが良いでしょう。こういうときは主治医の指示にしたがって,まず状態が安定するのを待ちます。

適切な治療を受けていれば,いつか必ず回復期に入ります。症状が安定し,「まだすっきり治りきってはいないけれども,“回復期”に入ったな」と思えるような状態になってから,「ひとりCBT」を始めましょう。というのも,急性期では,まず薬物療法を中心とした治療をきちんと受けて少しでも状態を良くすることが重要ですし,そのようなときに「ひとりCBT」を開始するのは,むしろ心身に負担がかかり,症状が悪化するおそれがあるからです。お腹をこわしているときに,慣れないコロッケ作りに挑戦するようなものです。(そもそも急性期には,「ひとりCBT」を始める気力がわかないのが普通だと思います。)

  回復期に入って安定してから,そして「自分でCBTをやってみてもいいかな」という気になったら,「ひとりCBT」にトライしてみてください。実際,CBTは治療の仕上げとして役に立つことが多く(私の臨床における実感です),安定してからであれば,自分一人でCBTを練習することも十分に可能だと思います。その際できれば主治医に,「認知療法・認知行動療法というのがあって,自分でちょっと練習してみようと思う」と,一言相談してみると良いでしょう。私が知っている限り,そのように相談された治療者が,「ダメだ。やめなさい」と言うことはまずありません。

●回復後に“再発予防”として実施する

  回復期ではなく,回復後の元気になった状態で,「ひとりCBT」を開始するのも,非常に効果的だと思います。回復直後にCBTを実施することで,たとえば,「なぜ今回,自分はうつ病になってしまったのか」,「今後,どういったことに気をつければ良いか」,「万が一症状がぶりかえしそうになったときに,どんな工夫をしたらよいか」などといったことが,具体的に理解でき,必要な技法が身につけられると思います。CBTはうつ病や不安障害などの精神疾患の再発予防効果が高いことが知られています。回復後,元気になった状態であれば,「ひとりCBT」は十分可能ですし,具合の悪かった時の記憶も鮮明でしょうから,そのときの体験からいろいろと学ぶことができます。

●ストレスコーピングとして「ひとりCBT」を習得する

  さて,とくに診断のつくような精神疾患にかかっていなくても,生きていればストレスはつきものですから,できれば上手に自分のストレスとつきあっていきたいものです。自分らしくストレスと付き合うことを「ストレスマネジメント」と言います。よりよいストレスマネジメントのためには,自分に合ったストレス対処法をあらかじめ身につけておくのが効果的です。自覚的にストレス対処を行うことを“ストレスコーピング”と言います。CBTは病気の治療だけでなく,健康な人のストレスコーピングとしても役立つことが,最近徐々に確認されています。実際私自身,ストレスが溜まったとき,「ひとりCBT」を実施することがよくあります。CBTを共に学んでいる仲間も皆,そうしているみたいです。

(※余談ですが,私は昨年末,私的な事情で,「このままだとうつになる~!」と思うぐらい,ストレスにまみれて苦しんだときがありました。久々にツールを使って,じっくりと認知再構成法に取り組みました。効果はてきめんでした。改めてこの技法の強力な効果を実感した次第です・・・笑)

  ですから,効果的なストレスコーピングを身につけて,自分のストレスマネジメント力をアップさせたいという方には,「ひとりCBT」をお勧めします。CBTはもちろん万能ではありませんが,実際にさまざまな技法・対処法が含まれますので,様々な状況や自分の状態に合わせて,それらの技法をピックアップして試すことが可能です。自分なりのCBTのパッケージを自分で作ることができるのです。これはストレスコーピングとしては非常に強力だと思います。

(※私がこれまでお会いしてきたクライアントさんの多くが,CBTの考え方と様々な技法を身につけてカウンセリングを卒業なさいましたが,回復後も,自分のためにCBTの技法を使い続け,元気に暮らしている方が多くいらっしゃいます。皆さん口をそろえておっしゃるのが,「病気になって良かったとは思わないけど,病気になったおかげでCBTを知ることができた。そして元気になった後でも,自分のためにCBTを続けることができて嬉しい」ということです。)

  以上,「ひとりCBT」を始めるにあたってのアドバイスでした。

●今日のまとめの一言:「ひとりCBT」を始める時期に気をつけたい。また「ひとりCBT」行う場合は,治療の仕上げのためなのか,再発予防を目指すのか,ストレスマネジメントの一環なのか,その目的を明確にしておこう。

|

« 【認知療法・認知行動療法】コラムその4:自動思考についてのナイスな説明 | トップページ | 【ストレスコーピング】 コーピングレパートリーを豊かにしよう »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【一人でできる認知療法・認知行動療法】その1:どんな時に始めると良いか:

« 【認知療法・認知行動療法】コラムその4:自動思考についてのナイスな説明 | トップページ | 【ストレスコーピング】 コーピングレパートリーを豊かにしよう »