« 【ストレスコーピング】 コーピングレパートリーを豊かにしよう | トップページ | 【一人でできる認知療法・認知行動療法】その3:“ひとりCBT”に適した本(入門編・抑うつ編) »

2005年5月31日 (火)

【一人でできる認知療法・認知行動療法】その2:ゆっくり少しずつ進めていこう

  ご自分で認知療法・認知行動療法を練習してみたい(以下,「ひとりCBT」と表記)方に対するアドバイスの第2弾です。

●はりきってどんどん進めようとしない

  専門家と一緒にCBTを進める場合は,セッション(面接,診療)は多くても週に1度でしょうから,無理のないペースで進めていけます。クライアントさんによっては,「どんどん進めたい」「もっと早く進めてほしい」とおっしゃる方もいらっしゃいますが,(モチベーションが高いこと自体はすばらしいことです),「あせらずに着実なペースで進めていくほうが,結果的にはきちんと身につきますよ」ということを説明し,急ぎすぎないようにしていただきます。

  本などを使って「ひとりCBT」を実施する場合,その気になれば数日あるいは1日で本を読み終えることができてしまいますが,CBTの本を読むことと,CBTの知識やスキルを身につけることは,別物だと考えてください。本には,認知再構成法(コラム法)などの技法や,その技法を練習するツールが紹介されており,やる気のある人は,はりきって一気に練習してしまおうとする傾向があるようです。が,専門家と一緒にやって,すごく順調に進んだ場合でも,1015回のセッションを必要とするのがCBTです。週に1度のセッションでも,3~4ヶ月はかかるのが普通です。したがって,一気に本を読み,一気に技法を練習しようということ自体に無理があるとお考えください。

●“時間がかかる”というより,むしろ“時間をかけて身につける”と考えよう

  CBTに限らず,新たな知識やスキルを身につけるには,それなりの時間や手続きが必要です。「ひとりCBT」は「料理本をみながら,ひとりでコロッケの作り方を覚えるようなものだ」と以前に書きましたが,“コロッケを作る”と一言で言っても,これまでジャガイモの皮をむいたことがない人は,皮むきから覚えなくてはなりません。今では苦もなく自動車を運転している人だって,最初は,カーブを曲がるとき,どの程度ハンドルを切ればよいのかといったことから,一つ一つ身につけていったはずです。ピアノの練習曲を一つ習得するのだって,曲を分解し,分解したものを何度も何度も練習し,時間をかけて弾けるようになっていくものです。

「ひとりCBT」も全く同じことです。習得にはそれなりの時間がかかるのです。「時間がかかる」というとネガティブな感じがするかもしれませんが,むしろ「確実にCBTを身につけて,今後の人生に役立てるためには,じっくりと時間をかける必要があるのだ」と考えていただくと良いかと思います。そそくさとあせって練習した結果,雑なスキルしか身につかなければ,かえってそれは役に立たないままで終わってしまうでしょう。時間をかけて丁寧に練習すれば,一生役に立つ知識とスキルとして,CBTを身につけることができるでしょう。

次回は,「ひとりCBT」のために役立つ一般書について,具体的に紹介してみたいと思います。

●今日のまとめの一言:本やツールを使って取り組む“一人CBT”は,少しずつ着実に進めていくことが重要である。

|

« 【ストレスコーピング】 コーピングレパートリーを豊かにしよう | トップページ | 【一人でできる認知療法・認知行動療法】その3:“ひとりCBT”に適した本(入門編・抑うつ編) »

コメント

こんにちは。
先日はお返事ありがとうございました。
“ベックの本”などと書いてしまいましたが、原書とかベックの訳本と言うわけではなく、“多分ベックの考えの流れを汲むものであろう”本を読んだのだと思います。実はもうそういう本は封印してしまったので(思い出すとまたそのときの状態に引きずり込まれそうで)、アマゾンで調べてみました。
私がわかりやすいと思ったのは『心のつぶやきがあなたを変えるー認知療法自習マニュアル』井上和臣著 です。
『いやな気分よ さようなら』もおもしろかったけれども、訳本だからかどうか、少し読みにくかったです。
大野さんの『心が晴れるノート』も読みましたが、ちょっと物足りなかったです。自習帳としての本ですから、シンプルでわかりやすいのですが、私はもっと事例が読みたいと思いました。
でも、認知療法の適用事例は、鬱が多く、私のように社会不安とか、人が怖い、人に溶け込めない、とかの症状に対する事例はあまりなく、残念です。
ああ、確か『現代のエスプリ』の事例集(認知療法だけではなかったけれども)も、興味深く読みました。
そんなに本も買えないし、田舎の本屋では店頭に並んでいるものも限られていますし、題名だけで注文して買うのは冒険です。専門書は高いですから。はずれだとがっかりします。
次回のブログ、とても楽しみにしております。

投稿: すみれ | 2005年6月 1日 (水) 09時01分

すみれ様
 コメント,大変参考になります。ありがとうございます。
 たしかに当事者用の本は,「うつ」の人を対象にしているものが非常に多いかもしれませんね。また「題名だけで注文して買うのは冒険」とか,「専門書は高いから,はずれだとがっかり」というのも,本当にその通りだと思います。
 次回の記事を書くにあたっては,すみれさんのご意見をぜひ参考にさせていただきたく思います。心から感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: coping | 2005年6月 1日 (水) 10時14分

お返事どうも有り難うございました。
私は無収入者なので、ついついケチってしまいます。図書館で借りたものも中にはあります。でも田舎の図書館だと専門書もなかなか品揃えが満足できないんですよね。医大の図書館の蔵書も検索してみましたがほとんど認知療法に関するものはありませんでした。地元の医大にないと言うことは、そこで学び臨床に携わっている医者も、関心ない、と言うことでしょうか。
やはり、自分で学習するしかないのかもしれません。医者などに行く費用を考えたら、本の費用ぐらい安いものかもしれません、役に立つ(自分が活用できるものならば)本なら。
でも、そうしたら、医者や心理療法家は商売上がったりですね。
長々と失礼いたしました。次回楽しみにいたしております。

投稿: すみれ | 2005年6月 1日 (水) 22時46分

すみれ様
 その後次回をなかなかUPできないでおりますが,準備は進めております(言い訳・・・笑)。
 「ついついケチってしまいます」とのこと,当然ですよね。心理療法においてこそコスト感覚は重要だと思っております。セラピーを生業にしておいて言うのも何ですが,やはり高いお金を治療やセラピーに使い続けるよりは,同じお金をもっと楽しいことに使っていただけるように手助けさせていただくことが,私たちの仕事だと思っています。
 なのでもしこのブログような活動がその一助になれば,たとえ商売上がったりでも,やはり喜ばしいことだと思います。取り急ぎ本を紹介する予定ですが,もっと言えば,本を買わなくてもこのようなブログを見ていただくことで,ユーザーさんのコストを軽減できれば,と願っております。(野望に近いことを書いていますが)
 では近々本の紹介を2回に分けていたしますので,率直なコメントを頂戴できると嬉しいです。(先に言い訳してしまいますと,本をリストアップしながら,「これじゃすみれさんには納得していただけないだろうなあ」とちょっと弱気な虫が・・・笑)

投稿: coping | 2005年6月 2日 (木) 23時34分

お忙しいところ、お返事ありがとうございます。勝手なことばかり申し上げているのに、いつも丁寧に対応していただき恐縮です。
次回の催促をしているようで、申し訳ありませんでした。どうぞ気になさらないでください。
いつも私の言葉を肯定していただき、「さすが、専門家!」と思っております。とてもうれしくなります。いつも自分の意見は少数派で、異端なもの、と言う思いがぬぐえないので。
しっかり貴ブログを読ませていただき、勉強したいと思います。
心理療法家の数さえ少ない当地に住む、悩める私としては本当にめぐり合えてラッキーです。よろしくお願いいたします。

投稿: すみれ | 2005年6月 3日 (金) 01時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【一人でできる認知療法・認知行動療法】その2:ゆっくり少しずつ進めていこう:

« 【ストレスコーピング】 コーピングレパートリーを豊かにしよう | トップページ | 【一人でできる認知療法・認知行動療法】その3:“ひとりCBT”に適した本(入門編・抑うつ編) »