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2005年5月21日 (土)

【認知療法・認知行動療法】コラムその2:新世代の認知行動療法 ②

 “新世代の認知行動療法(CBT)”の続きです。

●新世代の認知行動療法: アセスメント 目標設定 技法の選択 というプロセスをたどる。

  アーロン・ベックの認知療法が,敬意をこめて“古典的認知療法”と呼ばれていること,認知療法・認知行動療法(CBT)そのものが進化して,現在では“新世代CBT”と呼ばれる事態にまで発展していることを,前節では紹介しました。では,“新世代CBT”とは,具体的にはどのようなものでしょうか?

  新世代CBTの発展は,学問的には,精神病理学やいわゆる“異常心理学”を通じて,各症状や障害の心理学的モデルが構築されたことが大きいと思われます。アーロン・ベックが構築したのは,異常心理学的に言えば“うつ病の認知モデル”でした。ベックの認知療法はうつ病に対する治療法として発展したのです。しかし認知療法の適用範囲が,うつ病以外の障害にも広がることによって,うつ病の認知モデルだけでは対応しきれなくなりました。ということは,不安障害なら不安障害の,統合失調症なら統合失調症のモデルを構築し,それに沿った認知行動療法のプロトコルを構築しなければならないということなのです。

  また他の治療法に比べCBTは,その全体のプロセス自体がある決まった手順を踏むというように,ある程度誰が誰に対してCBTを実施してもそのプロセスや結果は変わらないという汎用性がありますが,そうは言ってもクライアントさんにはさまざまな人がいらっしゃいますし,うつ病や不安障害と言っても,やはり人それぞれです。うつ病のAさんが抱えているのは,あくまでも「Aさんのうつ病」であり,別のうつ病のBさんが抱えているのは,やはり「Bさんのうつ病」であって,AさんとBさんのうつ病をきちんとアセスメントしてみると,全く異なるうつ病のあり方が明確化されることもあるのです。つまり単純な「認知モデル」でクライアントさんを理解するだけでは足りないのです。その方が抱えている障害なり症状なり問題なりを,CBTのモデルに沿ってきちんとアセスメントした上で,その方に合った技法を選択し,介入をパッケージ化していくことが必要なのです。

  以上のようなことは,現場で実際にCBTを実施すると,すぐに実感されることだと思います。つまりシンプルな認知モデルで介入を進めてもうまくいかず,目の前のクライアントさんの抱えている問題の全体像をアセスメントした上で,介入を計画するというプロセスがどうしても必要なのです。・・・といったことを世界中のCBTの臨床家が気づき始め,精神病理学や異常心理学の発展とあいまって,“新世代のCBT”として集約されつつあるというのが現在の状況でしょう。

  したがって,ごく限られたうつ病患者に対して行われていたアーロン・ベックの認知療法が,以下のシンプルなプロセスによって行われていたとすると(注:ベック先生の認知療法が実際にこんなに画一的であったということではありません。)

1.うつ病の認知モデルの心理教育

2.認知再構成法(コラム法)の導入と実践

3.終結

新世代の認知療法・認知行動療法は,以下のようなプロセスによって構成されることになります。

1.CBTのモデルや進め方についての心理教育

1.CBTの基本モデルに基づく,そのクライアントさんが抱える障害,症状,問題のアセスメントと心理教育

3.そのクライアントさんとのCBTにおける目標の設定

4.設定された目標を達成するための技法選択 (単一の技法の場合もあれば,複数の場合もあり)

3.各技法の導入と実践

4.終結

  新世代CBTは,クライアントさん個人,そして障害や症状の個別性をより重視したアプローチなのです。新世代CBTとは,個人個人のクライアントさんに合わせて,その人なりの“CBTパッケージ”を作っていく営みであると考えていただければ良いでしょう。このような丁寧な進め方が,多少時間がかかっても,結局は良好な結果につながると私は確信しています。

  そして私が憂慮しているのは,このような現状を知らずに,「CBT(とくに認知療法)と言えばコラム法(認知再構成法)」という古典的な知識に基づいてCBTについて語ったり,CBTを実施してしまっている専門家が少なくないことです。(もちろん最新の知見に基づき,CBTを実施していらっしゃる尊敬すべき先生方も多くいらっしゃいます)。このような事態はしだいに改善されてくることと思われますが,過渡期である現在,過渡期であるがゆえに,CBTを必要とする患者さん,クライアントさんがこうむる迷惑を極力少なくするために,私たちはできることは何でもやっていきたいと考えています。

●今日のまとめの一言:現在の新世代CBTは,問題をアセスメントした後,クライアントさんに役立つ技法をチョイスして,パッケージを作るというプロセスそのものを言う。

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コメント

 そうか、そうだったんだ。認知療法は、有名なコラム法からどんどん進化していっているんですね。当然ですね。
 それを知っていれば、この春までいた精神科思春期外来でもっと効果的な援助ができたなあ。残念。
 しばらく自習させていただきます。

投稿: アド仙人 | 2005年5月22日 (日) 00時41分

アド仙人さま
コメントありがとうございます。とっても励みになります。
「CBT最高!」という厭味な感じのブログになりつつありますが,わざわざCBTなどと言わなくても,うまくいっているセラピーで起きている現象はさほど変わらないのだとも思います。あ,それが“共通要因”ということに絡むのかな。こちらこそまた色々と教えてください。

投稿: coping | 2005年5月22日 (日) 09時18分

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