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2005年5月17日 (火)

認知療法,認知行動療法の特徴 その5

認知療法,認知行動療法(以下略してCBTと表記することも)の特徴その5は,「その4」で少し書きましたが,自分の体験などを紙に書き出すことについてです。

白紙やツールを使って,外在化する: CBTの特徴 その5

  CBTでは,何でもかんでも紙に書き出します。セラピストが次から次へと書いていく場合もあれば,書くのが好きなクライアントさんは,自分でどんどん書き出してくれるようになります。書き出すのは,文章だけではありません。図や絵も多用します。このような作業を“外在化”と言います。

  たとえば「CBTの特徴 その4」でアセスメントについて紹介しましたが,アセスメントとして聴取した内容も,必ずセラピストがクライアントさんの目の前で書き出しますし,書いたものはコピーしてクライアントさんと共有します。クライアントさんが自分でアセスメントの作業をして書いてくれる場合は,それをコピーさせてもらって,やはり同じように共有します。私がアセスメントの際に実際に使っているのは,表ではなく,循環図のようなものです。アセスメントのための5項目,①状況,②認知,③気分感情,④身体,⑤行動,の循環的な相互作用を,目で見て把握できるように工夫したものです。

私が運営しているCBTの機関では,アセスメントの際,必ずこのツールを使います。ツールに外在化することにより,セラピストはクライアントさんの体験の全体像を,クライアントさんと共有できるので,とても便利です。またクライアントさん自身も,自分が体験していることがツールに外在化されることで,それを眺めることができ,「ああ,今の自分が抱えている問題って,こういうことなんだ」と実感をもって理解されるようです。

(※私たちが使っているアセスメントツールにご興味のある方は,メールにてご連絡いただければ,ツールが紹介されている文献をお知らせするなどして,ご対応いたします。その場合恐れ入りますが,本名と所属,職種等をお知らせください。)

  ツールを使って外在化するのは,アセスメントだけではありません。たとえば,CBTにおける主要技法のひとつである“認知再構成法”(いわゆる“コラム法”)は,必ずと言っていいほど,表や図といった外在化ツールを使って実施します。認知再構成法は,習得すればさほど難しい技法ではありませんが,身につけるまでは,それなりに段階を踏む必要がありますし,扱う情報量も結構多いので,認知再構成法を,最初から頭のなかだけで行うのは,かなり大変です。

人が一度に処理できる情報量には限界があります。たくさんの情報を頭のなかだけで,あるいは会話だけで行うとなると,かなりの負担が脳にかかります。認知療法・認知行動療法(CBT)がツールを使うのは,情報を外在化することによって,脳にかかる負担を軽くしようという意味もあるのです。

他にも紙やツールに書き出す,つまり外在化する利点はいくつもありますが,一つ一つ詳しく述べるときりがないので,以下にまとめてみます。

自分の抱えている問題の全体像を,目で見て眺めることができる。

自分の抱えている問題を,距離を置いて客観視することができる。つまりメタ認知能力が発揮されやすくなる。

情報を脳のなかではなく,ツールに外在化して扱うので,脳にかかる負担が減る。

セラピストとクライアントさんは外在化されたツールを共有することができる。

外在化の作業を行うなかで,自分との対話が活性化される。(“問題となる自分”そのものが外在化されるので,“外在化される自分”と“外在化する自分”という良い意味での分裂が起き,自己内対話が発生しやすくなる。)

記録として残るので,その後の状態と比較することができる。

自分の状態を家族など第三者に伝えるとき,ツールを見せながら話せるので,便利である。

書くのが好きな人は,ツールを使った作業自体が楽しくなる。また図を描くという作業も,はまると楽しいものである。

  思いついたことをとりあえず挙げただけでも,“ツールを用いた外在化”には,多くの利点があることがわかります。CBTの本には,さまざまなツールが紹介されています。興味のある方は,そのようなツールを実際に使ってみて,外在化する効果を確かめていただきたいと思います。また,既成のツールではなく,自分仕様に作ってみるのも楽しいものです。最近ではパソコンを使って,自分に合ったツールを作って見せてくれるクライアントさんもいらっしゃいます。(私自身,最近ちょっとしたストレスがあり,新たにちょっとしたツールを作って,それで整理してみました。そのおかげで,一応そのストレス状況が多少整理でき,次の段階に進むことができました。改めてツールを使って外在化することの効果を実感しました。)

  認知療法・認知行動療法(CBT)をセラピストとして実践しようとする人にアドバイス。クライアントさんにツールの使用を勧めるのであれば,必ず自分でそのツールを使いこなせるようにしていただきたいと思います。セラピストといえども人間ですから,いろいろなストレスを感じることが日々あるでしょう。自分自身のストレスコーピングとして,どのツールをどういうときに使うと役に立つのか,どのツールのどんなところが使いやすいか,あるいは使いづらいか・・・といったことは,自分で使ってみて初めて実感できるものです。ツールを自分で使うことで,自分自身のストレスコーピングを行うことができ,さらにセラピーをより効果的にできるのであれば,それこそ一石二鳥だと思いませんか?

●今日のまとめの一言:図や文章で自分の体験を書き出すことを“外在化”と言う。外在化することで,脳に負担をかけすぎずに,CBTのいろいろな作業を行うことができるし,“外在化された自分”と対話がしやすくなる。

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