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2005年5月12日 (木)

認知療法,認知行動療法の特徴 その3

認知療法,認知行動療法(以下略してCBTと表記することも)の特徴その3をご紹介します。今回は,セッションでのコミュニケーションのあり方についての特徴です。

●“双方向的な対話”によって進められること: CBTの特徴 その3

 双方向的な対話というのも,CBTの特徴です。双方向的対話というと何だか難しそうですが,要はクライアントさんもセラピストも積極的に発言し,互いにやりとりをするということです。「え? そんなのあたりまえじゃないの?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,実は双方向的な対話というのは,日本のセラピーやカウンセリングでは,それほど当たり前ではありません。

 日本で行なわれている従来のカウンセリング(特に臨床心理士など心理系のカウンセラー,セラピストが行なうもの)は,来談者中心療法という理論と方法論に基づいて行なわれている場合が多く,来談者中心療法で推奨しているコミュニケーションとは,簡単に言うと,クライアントさんの話をセラピストは傾聴し,受容共感するというものです。具体的には,セラピストはほとんど話しません。クライアントさんの話を,ひたすらじっくりと聴き,それを受け止めるというやり方です。そのようなやり方が悪いというわけではありません。クライアントさんのなかには,セラピストが傾聴しているだけで,自分で語り,語りながら自分をよりよく理解し,いろいろと気づき,気づいたことを自分で統合していくことのできる人もいます。そういう方の場合,来談者中心療法型のコミュニケーションで,セラピーはどんどん展開いきます。でも,それはごく一部のクライアントさんに限られた現象だと私は思います。

  またもし私がセラピーを受けるのであれば,カウンセラーにひたすら傾聴されるのは嫌だなあと,正直言って思います。話はきちんと聞いてほしいですが,それに対するコメントやアドバイスもちゃんとしてほしいのです。

 認知療法,認知行動療法の場合は,一方的な「話す」・「聴く」の関係ではなく,互いに「話し合う」,「聞き合う」という活発なやりとりが行なわれます。つまり「対話」が行なわれるのです。といっても,セラピストは,自分の個人的なことをクライアントさんに話すのではなく(当たり前ですけど),「ソクラテス式質問」といった質問をしたり,「心理教育」と呼ばれる情報提供を行なったりすることが大半です。さらにクライアントさんの許可を得た上で,セラピスト自身の意見や提案も積極的にクライアントさんに伝えていきます。ですからCBTでのやりとりは,一方的ではなく双方向的で,非常に活発な感じになるのです。

もちろんそのような対話を導入し,展開していく責任は,セラピストにあります。クライアントさんは,セラピストと話をしているうちに,知らず知らずの間に自分がセラピストと活発なやりとりをしていることに気づくのです。そしてこのような対話を繰り返すこと自体が,クライアントさんが元気になっていくための要因となるのです。

(余談ですが,以前,臨床心理士として勤務していたクリニックでは私以外のセラピストは“来談者中心療法”的なカウンセリングを行っていました。カウンセリングの内容は隣室や廊下まで聞こえることはなかったのですが,笑い声や話し声などは何となく面接室の外にも伝わるような作りになっていました。よくそのクリニックのスタッフに言われたのは,私の面接日だけ,面接室でのやりとりがやけに明るい,笑い声なども聞こえてきて楽しそう,ということでした。それは私自身もよく実感することがあります。CBTのセッションは,楽しい雰囲気を作り出すようです。)

  なぜこのような双方的な対話が,クライアントさんの援助につながるのでしょうか? 私が思うに,CBTで交わされるクライアントさんとセラピストの対話は,適度に受容的で適度にポジティブで適度に生産的です。クライアントさんは,そのようなやりとりをセラピストとの対話で繰り返すうちに(二人対話),次第に適度に受容的で適度にポジティブで適度に生産的なやりとりを,自分自身の頭のなかで出来るようになるのだと思います(一人対話)。これまではネガティブ思考にとらわれていたクライアントさんが,セラピストとのほどよい二人対話をモデルにして,今度はほどほどにポジティブな一人対話ができるようになるのです。

以上の話をまとめてみます。

1段階(CBT開始前):クライアントさんの中では,“ネガティブなぐるぐる思考”が続き,ストレスから抜けられない。

2段階(CBT実施中):セラピストとクライアントさんは,“ほどほどに受容的でポジティブで生産的な二人対話”を繰り返すうちに,ストレスに上手に対処できるようになる。

3段階(CBT実施後):クライアントさんの中で,“ほどほどに受容的でポジティブで生産的な一人対話”が行われるようになり,一人で上手にストレス対処ができる。

以上が認知療法,認知行動療法(CBT)の特徴その3でした。最後に,一人でCBTをおやりになる方にアドバイスです。自分を二つのパートに分け,自分自身と対話するようにCBTの学習を進めていきましょう。一人が“セラピストである自分”,もう一人が“これまでのネガティブな自分”です。セラピストである自分は,もう一人の自分が,ほどほどに受容的で,ほどほどにポジティブで,ほどほどに生産的になれるよう,辛抱強くやさしく語りかけてあげましょう。はじめはわざとらしく感じるかもしれませんが,気にせずそのような対話を続けてみましょう。続けるうちに,自分にやさしい一人対話が少しずつできるようになり,結果的にストレス対処が上手にできるようになるでしょう。

今日のまとめの一言: 認知療法,認知行動療法において,セラピストとクライアントは,ほどほどに受容的でポジティブで生産的な二人対話を活発に行う。セラピーが進むにつれ,クライアントは同じような対話を一人でできるようになる。

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コメント

はじめまして。こんにちは。
私は心療内科にかかって、認知療法を薦められました。自分で本も読みました。私は医師には「社会不安障害」と言われましたが、自分で本を読んだ結果、病的ではないと思っています。カウンセリングもそこの病院で受けましたが、結局認知療法は受けずじまいで、今は行っていません。でも、認知療法の考え方は参考になりました。今でも思い出しながら生きています。生きるのがかなり楽になっています。検索でここのブログを見つけ、興味深く読ませていただいています。
これからも楽しみにしております。さようなら。

投稿: すみれ | 2005年5月16日 (月) 12時36分

すみれ様
このブログ作成者のcopingです。コメントありがとうございました。認知療法で生きるのが楽になったとうかがって,とても嬉しいです。きっとすみれさんが上手に活用なさったのですね。このブログが少しでもお役に立てるよう続けてまいりますので,こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

投稿: coping | 2005年5月16日 (月) 13時20分

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